「予防医療」とは?

「予防医療」という言葉をご存知でしょうか。健康ブームと言われて久しい昨今ですが、日本ではまだまだ耳慣れない言葉なのではないかと思います。
従来の医療というのは、病気の治療を行うことに重きが置かれていました。それに対し、予防医療というのは病気を未然に防ぐための医療のこと。バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、定期的な健康診断の受診など、健康を維持・増進するための取り組みのことを言います。
また、病気の重症化や再発など、病状の悪化を防ぐための取り組みも予防医療の概念に含まれます。
これまでの医療のあり方を問う予防医療が、いま大きな期待と注目を集めています。それには大きく3つの理由が挙げられそうです。「体が丈夫で病気とは無縁」という方もぜひご一読頂ければと思います。予防医療は、すべての人が自分ごととして捉えるべきテーマです。

予防できる生活習慣病が、多くの命を奪っている

ひとつ目は、日本人の死因の多くが生活習慣病であるということ。厚生労働省の「平成27年(2015)人口動態統計(確定数)」によると、日本人の死因の1位は「悪性新生物(ガン)」、2位が「心疾患(心臓)」、3位が「肺炎」、4位が「脳血管疾患」、5位が「老衰」。1位、2位、4位を生活習慣病が占めています。
生活習慣病はその名の通り、食事、運動、睡眠、喫煙、飲酒、ストレスなど、長年の生活習慣の乱れが積み重なった結果として引き起こされることが多いもの。つまり自分の心がけひとつで、生活習慣病にかかり死に至るリスクを減らすことができるのです。

目指すは「健康寿命」世界一の国

ふたつ目は「健康寿命」が重視されるようになってきたこと。WHOの定義によると、健康寿命とは「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで、自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間のこと」。2013年の厚生労働省の調査では、男性の場合、平均寿命80.21歳に対して健康寿命71.19歳、女性の場合、平均寿命86.61歳に対して健康寿命74.21歳。平均寿命と健康寿命の間に、男性で9.02年、女性で12.40年の開きがあります。つまり、健康でなくなってから約10年間、生きていかなければなりません。
WHOの調査で、世界一の長寿国に輝き続けている日本。次の課題は、QOLを損なわずに笑顔で暮らせる健康寿命を延ばすこと。そのためには、予防医療の浸透が必要不可欠なのです。

「自分の身は自分で守る」アメリカ型へ

3つ目は超高齢社会の到来による医療保障制度のゆらぎです。
2015年9月の総務省の発表によると、日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、過去最高の26.7%。
WHOの定義では、高齢化率(総人口のうち65歳以上の高齢者が占める割合)が7%を超えた社会は「高齢化社会」、14%を超えた社会は「高齢社会」、21%を超えた社会は「超高齢社会」とされており、日本はすでに「超高齢社会」と呼ばれる状況です。
高齢者の中には、寝たきりの方も多くいらっしゃいます。厚生労働省が2010年に発表したデータによると、寝たきりの高齢者の数は予備軍を含めると360万人。2025年には490万人になると予想されています。それに伴い、寝たきりの高齢者の治療や介護にかかる費用も、年々膨れ上がっていくのです。
現状、日本は皆保険制度により、医療費の自己負担率は3割ですが、アメリカは10割。そのためアメリカには「自分の身は自分で守る」という考え方が根付いています。国の財政事情を考えると、自己負担率3割の皆保険制度が限界を迎える前に、一人ひとりが予防医療に関心を持ち、アメリカ型の考え方へと移行する必要あるはずです。

予防医療が人生を豊かにし、日本を財政危機から救う

厚生労働省は、「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進という指針を打ち出しています。具体的には、レセプト・健診情報等を活用したデータヘルスの推進や、特定健診・特定保健指導等を通じた生活習慣病予防等の推進、たばこをやめたい人を支援するたばこ対策の推進などです。厚生労働省はこれらの施策を通じて、「団塊の世代」のすべてが75歳以上となる2025(平成37)年に向け、5兆円規模の医療費・介護費の削減を目指しています。
一人ひとりが予防医療によって健康寿命を伸ばし、天寿を全うするまで家族と笑顔ですごすことが、医療費・介護費の抑制にもつながります。予防医療は人生を豊かにし、日本を財政危機から救う可能性を秘めた医療なのです。

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