日本人の死因第3位である脳卒中。このうち、脳の血管が詰まる病気が脳梗塞といわれるものだ。

脳梗塞の初期症状として最も多いのは運動麻痺で、力が入らなくなる、手足がしびれるなどがある。次いで、ろれつが回りにくい、急に言葉を理解できなくなるなど言葉の症状が多い。めまいや吐き気、視野の狭まりなどを訴える場合もあるが、全ての患者に複数の症状が出るとは限らない。

脳梗塞の治療は時間との闘いだと言われている。現在もっとも有効な治療は発症後数時間での開始が必要で、血栓を溶かす薬を投薬するt-PA治療は発症後4.5時間以内、カテーテルで血栓を溶解する薬を注入する動脈内血栓溶解療法は6時間以内が対象だ。

血管が詰まると血液の流れが止まり、脳の一部が壊死してしまう。脳の神経細胞であるニューロンは再生しないため、治療が遅れるほどに脳機能が失われる。そのため、いかに早く治療を開始できるかがポイントとなる。

そうした脳梗塞の治療に新たな光を差すかもしれないと、ある研究が注目されている。

東京医科歯科大学は9月19日、脳梗塞モデルニューロンの細胞分裂に成功したと発表した。総合研究機構脳統合機能研究センターの味岡逸樹教授、押川未央特任助教、岡田桂研究支援者の研究グループと、愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所との共同研究によるもので、成果の詳細がイギリスの科学誌Developmentに掲載された。

細胞には増えるものと増えないものがあり、神経細胞ニューロンは増えない細胞の代表例だ。脳梗塞ではニューロンが脱落し、脱落を免れたニューロンも増えず、進行的に脱落してしまう。そのために早急な治療の開始が必要であり、また治療が難しい病気とされている。

ニューロンが増えない仕組みは明らかになっていなかったが、同研究は、脳発生期のDNDメチル化酵素の作用によるChkl1キナーゼというタンパク質の機能抑制により、ニューロンの細胞分裂が防がれていることを突き止めた。また、低分子化合物カンプトテシンを特定の濃度で作用させることで、脳梗塞モデルニューロンの細胞分裂にも成功した。

これは、不可能とされてきた脳の再生医療に繋がる可能性のある革新的な成果である。しかし研究グループは、脳への悪影響やがん化の可能性も否定できないとコメント。今後は分裂したニューロンの機能を検討しながら、脳再生医療への展開を検証するとしている。

■参照記事
・東京医科歯科大学
「なぜニューロンは増えないのか?」~脳梗塞などで脱落するニューロンを分裂させて補充する革新的な再生医療への期待~
・マイナビニュース
脳再生医療への展開に期待 – 増えないニューロンの細胞分裂に成功
・国立循環器病研究センター
脳梗塞が起こったら
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