経済産業省が、2018年度からの導入をめざし、人工知能(AI)による予防医療システムの実用化に乗り出すことがわかった。糖尿病や高血圧の患者の運動習慣や食事の嗜好などをビッグデータとして集め、患者予備軍に自動的にメールなどで改善策をこまめに助言できるようにするという仕組みだ。

開発・運用は国立研究開発法人の日本医療研究開発機構が手掛ける。秋から企業の健康保険組合などの協力を得て、数千人のデータ収集を進めていく。生活習慣病の患者や患者予備軍を対象に、体重や血圧、運動習慣、食事の嗜好などのデータを提供してもらい、個人情報が分からないように加工。どんな人が病気にかかりやすいかを、AIが分析する。

システムを導入した企業の従業員は、定期健康診断で「要経過観察」の注意を受けた場合などに利用する。スマートフォン(スマホ)やパソコン、無線通信ができる血圧計などを介して生活習慣をシステムに入力すると、AIを通じて「運動しましょう」「塩分は控えめにしてください」といったアドバイスを1~数日に1回程度メールで受け取ることができる。

医師や看護師などが直接指導するという形式をとると、どうしても人件費などのコストが問題となる。AIを活用すれば、コストをカットすることができ、高い頻度で従業員にメールを送ることができ、さらにデータを見落とすというヒューマンエラーのリスク減を図ることができる。まさに一石三鳥という訳だ。

さらに従業員が希望すれば、医師や看護師、管理栄養士といった専門家が、AIの分析内容を参考にアドバイスをすることも視野に入れているという。今年度中に開発を終え、同機構を通じて来年度から企業の健保などに有料で導入を促す予定だ。

経産省によると、健康診断の直後には暴飲暴食を控えたりこまめに運動したりと生活習慣の改善に努める人が多いようだ。しかし、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ということなのだろうか。仕事の忙しさにかまけているうちに、いつの間にか元通りの生活習慣に戻ってしまい、症状を悪化させてしまうという傾向にあるのだという。

16年度の実証実験では、定期的に看護師らがメールなどで生活改善をアドバイスした人たちの病状は、何もしなかった人たちに比べて改善が伺えたという。このことから、こまめに体調をチェックして生活改善に取り組むよう促す、今回のようなシステムの導入は非常に有効であるといえる。

14年度の国の医療費は40兆8071億円。うち生活習慣病関連は3割超にのぼるとされ、重症化を防ぐことができれば、医療費の削減に大きく貢献するものとみられる。糖尿病を例にとると、通院の軽症患者にかかる費用が平均で年間40万円なのに対し、透析が必要になると平均で年間580万円と、負担が10倍以上に膨れあがってしまうケースがあるという。

経産省は予防医療を充実させることで、年1兆円程度の医療費削減の効果とともに、食事指導やフィットネスなどの市場規模が4兆円になると試算している。

民間ではすでに、日本IBMと藤田保健衛生大学(愛知県豊明市)、第一生命保険が、AIで生活習慣病患者の電子カルテを分析する共同研究に取り組んでいる。より効率的な治療方法を見つけたり、新たな保険商品の開発につなげたりするのが狙いだ。AIを活用した、国内初の大規模な電子カルテの分析として注目を集めている。

果たしてAIの予防医療への導入は、逼迫する国の財政を救う切り札となるのか。引き続き今後の動向に注目していきたい。

【参照記事】
日本経済新聞
AIで生活習慣病予防 経産省、健保データ活用 患者予備軍に改善助言

毎日新聞
AI、糖尿病分析 愛知の大学と企業連携 電子カルテで病状把握へ

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