「ブーン・・・・・ブーン。」
どこからともなく迫ってくる羽音。耳元で鳴り響いては消え、また鳴り響く。気がつけば腕やら足やらが痒くてたまらない。ただでさえ寝苦しい夏の夜を、さらに寝苦しくするやっかい者「蚊」。その堪え難い痒みに、悩まされている方も多いのではないでしょうか。

しかし、痒いくらいならご愛嬌。病原体を持っている蚊に刺されると感染症を発症する可能性もあるので注意が必要です。そこで今回は、蚊が媒介する感染症とその予防法をご紹介したいと思います。

蚊が運んでくる病原体

病原体を保有する蚊に刺されることによって起こる感染症を、「蚊媒介感染症」といいます。蚊媒介感染症は大きく2つに分けられ、ウイルス疾患に日本脳炎、デング熱、チクングニア熱、ジカウイルス感染症、ウエストナイル熱、黄熱などがあり、原虫疾患にマラリアなどがあります。

感染症が流行するのは主に熱帯や亜熱帯であり、日本では日本脳炎以外の蚊媒介感染症は輸入感染症と見られています。しかし2014年にデング熱の発生が話題となったこともあり、油断はできません。

では、代表的な蚊媒介感染症をいくつか見ていきましょう。

日本脳炎

主にコガタアカイエカによって媒介される感染症です。ヒトからヒトへは感染せず、増幅動物であるブタの体内でいったん増え、血液中に出てきたウイルスを蚊が吸血し、その上でヒトを刺すと感染します。ただし、感染しても発病するのは 100〜1,000人に1人程度であり、無症状の場合がほとんどです。

発病した場合の症状としては、38〜40℃あるいはそれ以上の高熱が数日間続くほか、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などが起こります。また小児の場合、腹痛や下痢を伴うことも多くあります。

死亡率は20〜40%で、幼少児や老人の場合は非常にリスクが大きいと言えます。生存者の45〜70%に精神神経学的後遺症が残るとされ、特に小児の場合、パーキンソン病様症状や痙攣、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などの重度の障害を残すことが多いとされています。日本脳炎の不活化ワクチンの予防接種が有効な対策です。

デング熱

デングウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)に刺されることによって生じる感染症です。症状として、急激な発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などが見られます。通常、発症後2~7日で解熱し、解熱時期に発疹が出現します。まれに重症化し、デング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、最悪の場合、死に至ることもあります。思い当たる症状がある場合、医療機関にて早期に適切な治療を受けることが重要です。

ジカウイルス感染症

中南米を中心に発生している、蚊を媒介する感染症です。症状として、軽度の発熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛等が見られます。感染しても症状が軽い、あるいは症状がない場合もあります。

妊娠中にジカウイルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがあります。また、性行為により男性から女性パートナーへ感染した事例も報告されているため、注意が必要です。

マラリア

亜熱帯・熱帯地域を中心に発生する感染症です。世界保健機構(WHO)の推計によると、年間2億人以上が感染し、200万人が死亡するとされています。
ヒトに感染して発症するのは、熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、卵形マラリア、四日熱マラリアの主に4種です。このうち、熱帯熱マラリアは重症化しやすく、死亡率が高いと言われています。
日本国内では、1991年の輸血マラリアを最後に輸入例以外の報告はありません。

蚊媒介感染症を予防するには

蚊媒介感染症の最大の予防法は、とにかく蚊に刺されないことです。そのための対策としては、蚊から肌を守ることと、蚊を発生させないことの2つが挙げられます。

蚊から肌を守る方法として、長袖・長ズボンを着用して肌の露出を少なくする、明るい色の服を着る、虫除け剤を使うなどがあります。

蚊の発生を抑える方法としては、庭やベランダなどに植木鉢の受け皿や空き缶などを放置しない、排水溝などはこまめに清掃して詰まらせないようにする、などがあります。

夏休みはキャンプや花火大会など、蚊の格好のターゲットとなるイベントが目白押しです。きちんと対策を施して、楽しい夏の思い出をつくりましょう。

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